「こんこんさまにさしあげそうろう」森はな・作 梶山俊夫・絵(PHP研究所)
寒い寒い冬。雪がたくさん降り積もっています。 巣穴の中で、子ギツネがお腹をすかせて泣いています。 母さんギツネは餌を求めてさまよいます。 村のお百姓さんのニワトリを狙いますが、 犬に吠えられてしまいます。 池で魚を取ろうと思いましたが、 池は凍りついていてダメでした。 そんな時… 村外れのお稲荷様の森から、 鉦と太鼓の音が聞こえてきました。 『こんこんさまに さしげそうろう』 という、子どもたちの声も聞こえてきました。 今夜は「のせぎょう」だったのです。 母さんギツネはお供えの小豆飯と油揚げを巣に持ち帰りました。 二匹はお供えを食べて、お腹一杯になりました。 子ギツネは母さんギツネの胸にもたれてうとうとと眠ります。 母さんギツネは静かに子守歌を歌ってやるのでした。 「野施行(のせぎょう)」とは…寒中に餌をさがすことのできない 野の狸や狐などの鳥獣に餌を施す事。(YAHOO辞書より) 非常に美しい物語です。 暗い雪道を子どもたちが提灯を掲げ、鉦と太鼓を叩きながら 『こんこんさまに さしあげそうろう』と唱えながら歩くシーンは幻想的です。 「のせぎょう」とは何かを、大きい子が小さい子に説明する場面もあります。 それによれば、野施行は鳥獣被害を防ぐため、大寒の晩に行われるそうです。 昔の人は、こんな風に野の動物たちとの共存を図ったのですね。 是非おはなし会で読みたいと思い練習しましたが、 どうも泣けてしまって仕方ないので 読み聞かせで使うのは断念しました……(2012/09/11) |