◇ふしぎないちもんせん◇
「ふしぎないちもんせん」谷真介・文 二俣英五郎・絵(チャイルド本社)
沖縄の昔話です。 昔、沖縄のある村にさんらあという名の男の子がお父さんと二人で暮らしていました。 さんらあの家は、いくら働いても貧しい暮らしでした。 ある日、さんらあは商売をするためにお金を預かって出掛けます。 その途中、おばあさんにつかまって川に捨てられそうになっている猫を買って助けてあげます。 また次の日、さんらあはおじいさんにつかまって川に捨てられそうになっている犬を買って助けてあげます。 そして次の日、今度は子供達にいじめられている子猿を買って助けてあげるのですが、 お金はすっかりなくなってしまいました。 ところが、その子猿は猿の王様の孫だったのです!! さんらあは猿の王様に招かれて猿の王様の城へ。 さんらあはごちそうを食べたり猿の曲芸を見たりして楽しく過ごします。 そして家に帰る時、猿の王様は、さんらあに何でも願いがかなう「金の一文銭」を授けてくれるのでした。 さんらあとお父さんは金の一文銭に願って二階建の家や欲しい物を色々手に入れます。 が、その噂を聞きつけてやってきたのは、隣の村の欲張りじいさん。 欲張りじいさんに、まんまと金の一文銭をだまし取られてしまいます。 金の一文銭を取り返すため名乗りを上げたのは猫でした。 猫は欲張りじいさんの家のねずみ達に命令して金の一文銭を取り返します。 が、猫が一文銭を持って帰る途中、犬が現れ、一文銭を横取りしてしまいます。 しかし、橋の上で犬は一文銭を川に落とし、犬はそのまま家に帰ってしまいました。 猫は仕方なく大きな魚をおみやげに持って帰りますが、 さんらあが魚の腹に包丁を入れると、金の一文銭が出てきたのでした! こうして、猫は家の中で大切に飼われ、犬は罰として家の外で番をする事になったのでした。 韓国の昔話「いぬとねこ」に大変よく似たお話です。 「いぬとねこ」ではおばあさんが助けたのはすっぽんでした。 そして竜宮の王様から願いのかなう「玉」を貰います。 更に「いぬとねこ」では犬と猫が協力して玉を取り返しに行くのですが、 猫の功績の方が大きかったので、猫は家の中で、 犬は家の外で飼われる事になった、という結末です。 「ふしぎないちもんせん」では、犬はちょっと意地悪で頭が悪い役回りです。 一般的に犬は忠誠心があるイメージでし、 犬好きな方にとっては少々納得のいかない展開かもしれませんね。 あとがきにありましたが、沖縄には猿はいないそうです。 猿が出てくるのは中国の影響との事です。 このパターンのお話は日本や中国・インドネシア、ヨーロッパにもあるそうですので、 色々比較して読んでみたいな、と思います。 それから、イラストは二俣英五郎さんのほのぼのした絵です。 犬もそれほどダメな犬には見えないのですが…(むしろ、可愛い!) 私は、ラストの方の、猫が大きな魚を担いで歩いている絵がとても好きです。 楽しい絵本ですが、残念ながら現在は絶版となっているようです。 ◇追記(2017年1月) おはなし会で読んでみたいと思いつつ、なかなか機会がなく、 購入してから何年も経ってしまいました。 子どもたちに見せるために、本物の一文銭も用意してあるのですが… |