「八方にらみねこ」武田英子・文 清水耕蔵・絵(講談社)
養蚕にまつわる昔話です。 ある冬の日、小さな迷い猫が親切なおじいさんとおばあさんの住む家にやってきます。 二人は子猫に「みけ」と名前をつけ、大切に育てます。 おじいさんとおばあさんはお蚕を飼って暮らしを立てていました。 ある夜、みけはお蚕を食べにきたネズミと戦いますが、呆気なく負けてしまいます。 みけは山猫の許に修行に出掛けます。 やがて、苦しい修行を成し遂げ立派に成長したみけは、 おじいさんとおばあさんの家に帰り、ネズミどもを退治し、お蚕の守り猫となりました。 赤と黒の色彩がとても印象的なイラストです。 小さかったみけが修行でどんどんたくましくなり、 山猫の火を大目玉でカッと見据えるところは思わず息を呑むほどの迫力があります。 テンポの良い文章ですので、「おはなし会」用としても大変読みやすいです。 大人の方にも喜んでいただける一冊です。 ちなみに、私が好きな場面は… ・山猫初登場のシーン。 「うう、おう、ちびねこ、なにしにやってきた」 う〜ん、ドキドキ怖いです! 読んでいる私も力が入るところです。 ・修行の最後の山場でみけが八方から押し寄せる火をにらみ返すシーン。 「くくう。くるしい。目がとけそうだ」 かっと見開いたみけの目玉がすごい! ・修行を成し遂げたみけが山猫にお礼を言うシーン。 「やまねこさま。とうとうやりました。ありがとうございました」 しみじみする場面です。(2011/05/25) |