◇おいてけぼり◇


 「おいてけぼり」さねとうあきら・文 いのうえようすけ・画(教育画劇)

  日本の民話絵本シリーズから、怪談です。

   昔、「おいてけぼり」と呼ばれる気味の悪い堀があった。
   昼間は魚が一匹も釣れないのに、夕刻になると鯉でも鮒でも面白いように釣れる。
   が、さて帰ろうとすると、「おいてけー、おいてけ―」と怪しい声が響き、
   魚籠(びく)に入っていた魚が堀へ帰ってしまうのだ。

   この噂を聞いて、大工のきんじが肝試しを買って出た。
   案の定、昼間は一匹も釣れなかったのに、夕方お寺の鐘が鳴ると、みるみる釣れ始めた。

   が、帰り支度を始めた時…
   「おいてけー、おいてけー」と堀の底から不気味な声が響いた。

   きんじは魚籠を抱きしめると、走った。
   やがて、あの声も聞こえなくなり、きんじがほっと立ち止まった時だった。
   手ぬぐいを被った女に呼び止められたのだ。

   魚を分けてくれ、と女が手ぬぐいを脱ぐと、
   な、なんと、現れたのはのっぺらぼうだった!!

   「化けもんだー!!」
   けたたましい叫びをあげ、きんじは無我夢中で走った。
   ようやく自分の家に飛び込んだその時…



  暗い堀に、ぴちぴち跳ねる魚たち。堀に住む、謎の主。赤らんだ月の夜。
  風情のある怪談です。
  ラスト、くるくるてんと目を回すきんじが面白いです。

  私は、夏、六年生のクラスで読む事が多いです。
  以前、思いっきり真剣に読んだら、「怖過ぎる!」と言われた事があるので、
  今は力を抜いてやや明るい雰囲気で読むようにしています。(2012/08/24)


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