「おいてけぼり」さねとうあきら・文 いのうえようすけ・画(教育画劇)
日本の民話絵本シリーズから、怪談です。 昔、「おいてけぼり」と呼ばれる気味の悪い堀があった。 昼間は魚が一匹も釣れないのに、夕刻になると鯉でも鮒でも面白いように釣れる。 が、さて帰ろうとすると、「おいてけー、おいてけ―」と怪しい声が響き、 魚籠(びく)に入っていた魚が堀へ帰ってしまうのだ。 この噂を聞いて、大工のきんじが肝試しを買って出た。 案の定、昼間は一匹も釣れなかったのに、夕方お寺の鐘が鳴ると、みるみる釣れ始めた。 が、帰り支度を始めた時… 「おいてけー、おいてけー」と堀の底から不気味な声が響いた。 きんじは魚籠を抱きしめると、走った。 やがて、あの声も聞こえなくなり、きんじがほっと立ち止まった時だった。 手ぬぐいを被った女に呼び止められたのだ。 魚を分けてくれ、と女が手ぬぐいを脱ぐと、 な、なんと、現れたのはのっぺらぼうだった!! 「化けもんだー!!」 けたたましい叫びをあげ、きんじは無我夢中で走った。 ようやく自分の家に飛び込んだその時… 暗い堀に、ぴちぴち跳ねる魚たち。堀に住む、謎の主。赤らんだ月の夜。 風情のある怪談です。 ラスト、くるくるてんと目を回すきんじが面白いです。 私は、夏、六年生のクラスで読む事が多いです。 以前、思いっきり真剣に読んだら、「怖過ぎる!」と言われた事があるので、 今は力を抜いてやや明るい雰囲気で読むようにしています。(2012/08/24) |