「だいこんどのむかし」渡辺節子・文 二俣英五郎・絵(ほるぷ出版)
昔々。ある村で青物飢饉があった年。 一本だけ大きく大きく屋根より高く育った大根があった。 秋の終わり、村人たちが大根を抜こうとすると、 大根はめくめくめく泣きだし、大根おろしになるのは嫌だと言う。 村人たちは物言う大根は食べられない、と大事にする事にした。 それからというもの、村は不思議に穏やかになった。 秋の大風、冬の大雪も来なくなった。 夏は大根殿の木陰で子供たちが遊ぶ。 だが、毎日沢山の肥やしをやらねばならず、 村人たちは段々世話が面倒になってきた… 大根殿は、雪や大風の災厄から村を守ってくれているのでしょうか? それとも、大飯ぐらいの役立たずなのでしょうか? 村人たちが下した決断は… 村人たちの言葉に大根は黙って従いますが、シビアな結末が待っています。 前半は、かの有名な「おおきなかぶ」を思わせる内容ですので、 ほのぼのとした明るい物語かと思います。 が、意外な展開に驚かされます。 自然と人間の共生について考えさせられる一冊です。 とは言え、暖かで優しい絵と柔らかな文章でつづられた魅力的な昔話で、 読み語り用としても大変読み易いです。(2012/08/19) |