1.『修道女フィデルマ』シリーズ ピーター・トレメイン著 甲斐萬里江・訳 (創元推理文庫) 7世紀後半 アイルランド・その他 ケルト・カトリック
【既刊】長編7作品+短編集3冊 (続刊の刊行予定有り?) |
【時代背景】主な舞台は7世紀のアイルランド。 この頃はケルト・カトリックとローマ・カトリックの教義が対立していた。 第一作「死をもちて赦されん」の舞台・ウィトビアの教会会議(664年)を機に、ローマ派がアイルランドでも勢力を伸ばしつつある。 また、アイルランドに古来から伝わる多神教も信仰されていた。 これらの宗教対立や、アイルランド五王国の覇権争いも重要なテーマである。また、それらに伴う事件も多く描かれる。 【主人公】修道女フィデルマ 聖女ブリジットによって設立された「キルデアの修道院」の修道女。キャシェルのフィデルマとも呼ばれる。 ケルト派カトリック。 恐らく、ミステリ史上最もハイスペックな探偵。 ・王の妹。 ・高位の弁護士資格を持ち、場合によっては裁判官を務めることも可能。 ・若い&美人。(赤毛・緑目) 背が高く、スタイルも良い。 ・武器を用いない護身術の達人。 ・ラテン語・ギリシャ語・ヘブライ語等々、数か国語が堪能。 知性・行動力・権威・美貌、全てを兼ね備えているスーパー・プリンセス。 相棒のエイダルフ修道士に淡い想いを抱いている。(当時は修道士同士の恋愛・結婚が禁じられていなかった) 第6巻『翳深き谷』では、美しい歌声を披露する場面がある。 【相棒】修道士エイダルフ 正式名称はサックスハムのエイダルフ。 ローマ・カトリックの修道士。イングランドの南サクソン出身、世襲制の行政官(代官)の家柄に生まれた。 キリスト教に改宗後、アイルランドの修道院で医学を学んだ。薬学に精通している。 アイルランド語・ラテン語をサクソン語と同様に話せる。 年齢・身長はフィデルマと同じ位。褐色の髪、筋肉質の体格で、(フィデルマによれば)なかなかの美男子。 お酒に弱いらしい。(第6巻『翳深き谷』より) 「エイ・ダルフ」の意味は「気高き狼」。本人もこの名前に誇りを持っている。(第7巻『消えた修道士』より) 教義についてフィデルマと議論する場面が度々描かれている。 事件現場においてはフィデルマの助手的立場となるが、登場しない作品もある。 【魅力】作者のトレメイン氏は、イングランドの歴史家で、アイルランド史の権威。 古代アイルランドでは、女性は男性と同じように教育を受けることが出来、ほぼ同等の権利があった。 政治・宗教・教育・思想など、古代アイルランドの魅力に満ち溢れた作品。 ちなみに当時のアイルランド人の衛生観念は、他国と比べると飛びぬけて清潔好きだった。 『毎日湯を使って、しかも石鹸で体をこするなんて信じられない…』とエイダルフがぼやくシーンがある。 福祉に関する法律も充実していた。 ↑このページの先頭に戻る |
|||
2.『修道士カドフェル』シリーズ エリス・ピーターズ著(光文社) 12世紀前半 イングランド〜ウェールズ ベネディクト会
【既刊】長編20巻+短編集1冊 |
【時代背景】12世紀前半のイングランド。 ヘンリー1世亡き後の、スティーブン王(1096年頃-1154年)とモード王女の王位を巡る内乱時代。 この内乱は一進一退の攻防が長く続き、作中の登場人物たちの運命も翻弄される。 スティーブン王・女帝モードも登場する。宮廷政治の様子は興味深い。 【主人公】修道士カドフェル 1080年、ウェールズのトレヴリュー生まれ。本名は、カドフェル・アプ・メイリース・アプ・ダフィッズ。 イングランドのシュロプシャー州シュルーズベリの「聖ペトロ聖パウロ大修道院」の修道士。 16歳で第1回十字軍に参加。エルサレム陥落後は船乗りとして東方に留まる。 40歳の頃イングランドに戻り、ある事件を切っ掛けに修道士となった。(短篇『ウッドストックへの道』) 第一作「聖女の遺骨求む」の頃は57歳。 医学の知識が豊富で、修道院の薬草園担当。患者の治療に当たる。 治療対象には町の人々も含まれるので、しばしば修道院から外出することが可能となっている。 薬草園では、カドフェルが東方から持ち帰った珍しいハーブも植えられている。 英語・ウェールズ語の両方に堪能。 シュルーズベリはウェールズとの国境に近い町なので、 ウェールズの事情に精通したカドフェルの能力が事件解決に必要になることも多い。 人間味のある温かい人柄である。 【相棒】ヒュー・ベリンガー シュルーズベリ執行長官。(物語の初めの頃は執行長官代理) カドフェルより30歳以上年下の親友。二人の出会いは、第二作の『死体が多すぎる』で描かれている。 愛妻アラインとの出会いも『死体が多すぎる』で。 スティーブン王に忠誠を誓う。 【魅力】人間を見るカドフェルの温かいまなざしが最大の魅力。 恋人たちのロマンスも有り。読後感は爽やか。管理人の愛読書♪ 尚、シュルーズベリは実在の街で、現地では「カドフェル・ツアー」も催されている。 カドフェルの薬草園や作業所などの再現ミュージアムもあるらしい。 ↑このページの先頭に戻る |
|||
3.『修道士ファルコ』シリーズ 青池保子(秋田書店) 14世紀後半 ドイツ(〜スペイン) シトー会
【既刊】5巻 ※少女コミック |
【時代背景】カスティーリャ王国の国王ペドロ1世(ドン・ペドロ、1334年-1369年)の時代。 ドン・ペドロと主人公の出会いは、第一作で描かれている。 第1巻Chap.3の注釈に当時のドイツ皇帝はカール4世(在位:1355年-1378年)との記載有り。 【主人公】修道士ファルコ ドイツの「リリエンタール修道院」の修道士。 ドイツ系スペイン人。ナバーラ王国の血縁者。 かつては「ナバーラの鷹(ファルコ)」と呼ばれる、歴戦の剣士だった。 頭頂部にあるキスマークの形のあざを隠す為、剃髪せず、髪を伸ばしている。 修道院が巻き込まれた事件解決にしばしば駆り出される。 止むを得ず剣を振るうことになる事態も多く、一般人に化けるために俗世の服を着せられることも……本人は苦悩している。 【相棒】修道士オド 施療院担当の修道士。医学に精通。俗世では優秀な役人だった。 世俗に長け、腕も立つので、ファルコと一緒に事件解決に当ることに。 どちらかと言うと、オドの方がリーダー的存在である。 【魅力】ハンサムで剣の腕も立つ青年修道士ファルコ♪ 少女マンガではあるが、物語は大変真面目。もちろんギャグ・シーンも随所にあって純粋に楽しい。 修道院の様子もイラストで見れば分かり易いので、歴史修道会ミステリ初心者の方にもおススメ。 【シトー会について】ベネディクト会から派生した修道会。 フランス・ブルゴーニュ地方出身の修道士ロベールが1098年にフランスのシトーに設立したシトー修道院が発祥。 シトー会は、「聖ベネディクトの戒律」を厳密に守った点で、クリュニ―会と対峙する立場であった。 戒律の中でも労働と学習を重んじ、自ら農具をとり開墾や新農法の普及を行った。 修道服は、白い僧服の上に黒い袖なしの肩衣。 「白の修道士」と呼ばれている。ファルコによれば、作業によって肩衣の色が変わるとのこと。 ↑このページの先頭に戻る |
|||
4.『修道士アセルスタン』シリーズ ポール・ドハティー 古賀弥生・訳 (創元推理文庫) 14世紀後半 ロンドン・シティ ドミニコ会
【既刊】長編三巻(長期品切れ中) 短編『修道士アセルスタンの告白』は 『HMM 1997年6月号』に収録 |
【時代背景】エドワード3世が崩御し、リチャード2世(1367年-1400年)が10歳で英国国王に即位した時代。 実権は摂政のジョン・オブ・ゴーント(リチャード2世は甥)が握っているため、政情は不安定である。 【主人公】托鉢修道士アセルスタン 「聖アーコンウォルド教会」の教区司祭。 ドミニコ会の「ブラックフライアーズ修道院」の托鉢修道士(フライア)。 検死官ジョン・クランストン卿の書記。クランストンと共に難事件の解決に奔走する。 ある理由で修道院を出奔した過去があり、現在は貧しい人々が住む下町の教区司祭を務めている。 天体観測が趣味で、猫のボナベンジャーを大切にしている。 また、教区民の美しい未亡人ベネディクタに淡い恋心を抱いていて、そのことに悩んでいる。 かつては腕のいい射手として戦場に赴いたこともあった。 【相棒】検死官ジョン・クランストン卿 大酒飲みで陽気な大男。愛妻家。 検死官と聞くと組織の一部のような印象だが、クランストン卿は国王勅任の判事兼執行官のようなポジションにある。 (国王や摂政と直に応答する場面もある) 捜査権があり、事件現場に居合わせた時は、その場で罰金等を言い渡すことも。清廉潔白な人柄で、市民からの信頼も厚い。 アセルスタンのことは「最愛の書記」と呼んでいる。 【魅力】中世のロンドン・シティの様子が生き生きと描かれている。 もっとも、とにかくおどろおどろしい程汚くて臭いので、初めて読んだ時には、正直、辟易とさせられた。 第1作『毒杯の囀り』ではややぎくしゃくとした関係のクランストンとアセルスタンだが、 物語が進むにつれ二人の理解は深まり、信頼し合う名コンビへと成長していく。 第2作『赤き死の訪れ』はロンドン塔が舞台の連続殺人事件。 ロンドン塔と言えば、歴史的にも様々な曰くがある場所なので、歴史ファンには更に面白く感じられるかもしれない。 騎士修道会も登場する。強面(?)の修道騎士相手に堂々と渡り合うアセルスタンが男前。 第3作『神の家の災い』は、三つの謎解きミステリとなっている。 アセルスタンが修練期を過ごしたブラックフライアーズ修道院で連続殺人事件が起き、 アセルスタンが司祭を務める聖アーコンウォルド教会では奇跡を起こす謎の遺骨が見つかって大騒ぎとなり、 検死官クランストンは政治的陰謀が絡む密室怪死事件の謎解きに巻き込まれる。 修道院の殺人鬼の正体は? 奇跡の遺骨は聖女の遺骨なのか? クランストンは清廉潔白な己の立場を守れるのか? ハラハラドキドキの事件と同時進行で、修道院では神学上の議論が繰り広げられている。 異端審問官やアイルランド人の神学者が登場して、興味深い。 アセルスタンの博識な学者の面を見る事も出来る。 巻数が進むにつれ魅力が増すアセルスタン・シリーズだが、翻訳・刊行されているのは三作品のみ。 (ハヤカワミステリマガジンには、短編「修道士アセルスタンの告白」が掲載されている) 原作は10作品(2008年時点)あるのだが、続刊を読める日は来るのだろうか…? 【ドミニコ会】1206年に聖ドミニコによって設立された修道会(教皇による認可は1216年)。 同時期に設立されたフランシスコ会と同様、清貧を特に重んじた為「托鉢修道会」とも呼ばれる。 ドミニコ会は神学の研究に励み、学者を多く輩出した。異端審問官に任命されることが多かった。 異端審問官ベルナール・ギー(1261年頃-1331年)もドミニコ会士。彼は「薔薇の名前」に登場する。 尚、ドミニコ会士(Dominicanis)」は「主の犬(Domini canis)」とも呼ばれた。 異端審問官に任命されることの多かったドミニコ会士を揶揄したり恐れた故の呼び名だが、ドミニコ会士にとっては誇りだった。 アセルスタンも自らを「ドミニ・カニス(日本語訳は『神の猟犬』)」と称するシーンがある。 ところで、作中、クランストン卿が何回もアセルスタンを「修道士」と呼び、 その度にアセルスタンが「托鉢修道士です!」と訂正する場面がある。 修道士はモンク(monk)、托鉢修道士はフライア(friar)。日本語にすると何だかややこしい。 修道服は、白の僧服の上に黒の頭巾付きマントを羽織る。 ↑このページの先頭に戻る |
|||
5.『エルサレムから来た悪魔』 アリアナ・フランクリン著 吉澤康子・訳 (創元推理文庫) 12世紀後半 イングランド
【既刊】長編三作品 (『エルサレムから来た悪魔』は上下巻) |
※探偵役は女性検死官。容疑者の大半が司祭や修道士&修道女! 【主人公】女医アデリア フルネームは、ヴェスーヴィア・アデリア・レイチェル・オルテーゼ・アギラール 当時最高水準のサレルノ医科大学で学んだ医師で死体の専門家。語学に堪能で数か国語を話すことができる。 【あらすじ】 1171年。イングランドのケンブリッジで、子どもを狙った連続誘拐殺人事件が起きた。 嫌疑がユダヤ人に掛けられ、ユダヤ人への私刑や迫害が横行する。 国王ヘンリー二世は、イタリアのシチリア国王に事件解決の協力を要請する。 シチリア国王の命を受けてケンブリッジに派遣されたのは、 ユダヤ人の調査官・ナポリのシモン、 サレルノ医科大学で医学を学んだ女医で検死官のアデリア、 そしてアデリアの召使いでサラセン人のマンスールの三人。 シモンとアデリアの調査は進み、次第に容疑者が絞られる。 司祭、女子修道会院長、修道士と修道女たち、元十字軍兵士の騎士たち、そして王臣の税官吏… 残虐な手口で次々と子供たちを殺害した悪魔は誰なのか? やがて、悪魔の手はアデリア一行にも迫り… 【魅力】 こちらの作品に興味を持ったきっかけは、「修道士カドフェル」の後の時代を描いた小説だからです。 カドフェルの時代は、スティーブン王と女帝モードが王位を争う内戦が長く続きました。 アデリアの頃は、既に内戦に終止符が打たれ、ヘンリー二世の治世下、17年間平和が続いていました。(1171年当時) この時代、サレルノには世界最高の医学校があり、世界各地から医学を学ぶ者たちが集まっていました。 アデリアも大学で医学を学び、学生たちを教え、特に検死についての優秀な専門家でした。 そのため、王命を受けてナポリのシモンと共にケンブリッジにやってきたのです。 アデリアにとって不運なことに、当時のイングランドは女性の地位が低く、 女性が医術を行えば、魔女として宗教裁判にかけられて当然の社会でした。 それでもアデリアが派遣された理由は、語学に堪能で、英語とヘブライ語が話せたからです。 (アデリアは他にも、フランス語・ラテン語・ギリシャ語・アラビア語を話すことができます) アデリアがイングランドの医療水準の低さに呆れるシーンがありますが、 もしカドフェルと出会っていたら…と想像すると楽しい♪(カドフェルは1080年生まれ。1171年は91歳) さて、魅力的な人物が多く登場する本作ですが、実は陰の主役と言って良いのが王様のヘンリー二世。 ラストのヘンリー二世の格好良さに、くらくら(笑)しました! 史実とフィクションが絡み合い、人間の心の闇を描いたスピード感溢れるミステリです。 ※アデリア・シリーズは第三巻まで翻訳されています。以下、第二巻と第三巻のご紹介です。 第二巻『ロザムンドの死の迷宮』 【あらすじ】 迷路に囲まれた塔の一室で、ヘンリー二世の愛妾ロザムンドが毒殺された。 最大の容疑者は、王妃エレアノール。イングランドに再び内戦の危機が迫る。 事件解明のため、アデリアが現地に呼ばれ、迷宮と密室殺人事件の謎解きに挑む。 第三巻『アーサー王の墓所の夢』 【あらすじ】 1176年。大火で街ごと焼失したグラストンベリー大修道院の墓地から、二体の骨が掘り出された。 それは、アーサー王と王妃グウィネヴィアの遺骨なのか? 国王ヘンリー二世の命を受け、アデリアが調査の為グラストンベリー大修道院に赴く。 同行するのは、アデリアの幼い娘・アリー、アリーの乳母のギルサ、アデリアの召使でサラセン人のマンスール、 そして、アデリアの友人のエマとその一行。 だが、グラストンベリー大修道院では、多くの苦難がアデリアを待ち受けていた。 更に、途中の道で別れたエマたちが目的地に着かず、行方不明となっていたことを知ったアデリアは… 【魅力】 突然発掘された遺骨がアーサー王の骨か否か調べろとは、ヘンリー二世も無茶振りをしますね! 現代科学をもってしても鑑定できるのか疑問です。 でも、そこは我らがアデリア。見事に解決できるでしょうか…? 今回、アデリアはいくたびも窮地に陥ります。 まるで、アクション映画を見ているよう。ハラハラドキドキのし通しです。 まあ、自ら危地に飛び込んでいるようなところもあるのですが… その点はフィデルマとちょっと似ていますね。 グラストンベリー大修道院は実在しますし、アーサー王のお墓もあるそうです。 その古墓が発見されたと発表があったのは、リチャード獅子心王(ヘンリー二世の息子)の時代・1191年でした。 *・゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。. .。.:*・゚・* 大変残念ですが、作者のアリアナ・フランクリンさんは、2011年に亡くなられたそうです。(享年77) 女医アデリア・シリーズは第4巻が最終巻となります。(2015/09/23記) ↑このページの先頭に戻る |
|||
6.『聖人と悪魔〜呪われた修道院』 メアリ・ホフマン著 乾侑美子・翻訳(小学館) 14世紀前半 イタリア フランシスコ会
※ティーンズ向け |
※実在の有名絵画が登場する美術史ミステリ。 【あらすじ】1316年、イタリア。 殺人の疑いを掛けられた青年貴族・シルヴァーノは、アッシジ近くの町ジャルディネットの聖フランチェスコ修道院に身を隠す。 聖フランチェスコ修道院の隣には、聖キアーラ女子修道院があった。 そこには、見習い修道女のキアーラ(聖女と同じ名)の美しい少女がいた。 キアーラは、兄によって無理矢理修道院に入れられたのだった。 この頃、アッシジの聖フランチェスコ大聖堂では、大規模なフレスコ画の制作が進められていた。 二つの修道院は画家に顔料を提供しており、 顔料作りの助手をしていたシルヴァーノとキアーラは言葉を交わすようになる。 やがて二人はお互いに惹かれ合うようになる。 だが、聖フランチェスコ修道院で次々と殺人事件が起きて… 【魅力】ジャルディネットの町や、二つの修道院とほとんどの登場人物は架空だが、アッシジはもちろん実在の町。 当時アッシジの聖フランシスコ大聖堂の壁画を描いていた実在の画家シモーネ・マルティーニや、 彼が描いた現存するフレスコ画「聖マルティヌスの生涯」が登場する。 その時代にタイムスリップして、シルヴァーノらと共に美しいフレスコ画の制作過程を眺めているような気持ちになる。 数組の夫婦や恋人たちの愛憎劇が繰り広げられるが、かなりドロドロしている。(ティーンズ向けなのだが…) 探偵役の顔料師の中年ブラザー・アンセルモがなかなか魅力的な人物なので、続刊を期待したいところだが、 本作で完結している。 【フランシスコ会】アッシジの聖フランシスコ(1182-1226)により1209年頃アッシジにて創設。 (教皇から正式に認可されたのは1223年) アッシジの聖フランシスコは小鳥に説教した逸話や「平和の祈り」が有名。 聖キアーラ(1194-1253)は、日本では聖クララの方が通りが良いかも。 フランシスコ会の女子修道会クララ会の創始者。 男子の修道服は、焦げ茶色の頭巾付き僧服。裸足にサンダル。一番の特徴はベルトが縄であること。 ↑このページの先頭に戻る |
|||
7.『薔薇の名前』 ウンベルト・エーコ著 河島英昭・訳 (東京創元社) 14世紀 イタリア フランシスコ会 ベネディクト会・ドミニコ会
|
※かなり昔に原作小説を読み、映画を観たので、記憶が朧です。読み直したら加筆します。 14世紀のイタリア。 ベネディクト会修道院で起きた怪事件をフランシスコ会の修道士が解決する。 ドミニコ会の異端審問官も登場する。 【主な登場人物】 ・バスカヴィルのウィリアム:フランシスコ会修道士、元異端審問官、アドソの師 ・メルクのアドソ:ベネディクト会見習修道士、ウィリアムの弟子、記録本文の筆者 ・ベルナール・ギー:ドミニコ会修道士、異端審問官 ショーン・コネリ主演で映画にもなりました。暗くておどろおどろしい映画だった記憶があります 映画の立体ダンジョン(迷路)はすばらしく、見ごたえがありましたね。
↑このページの先頭に戻る |
|||
8.『ケルン市警オド』 青池保子(秋田書店) 14世紀後半 ドイツ・ケルン市
|
※『修道士ファルコ』の登場人物オドが主役です。 【時代背景】中世ドイツ屈指の商工業都市・ケルン市。 人口三万人のケルン市の警備は同職組合が担っているが、14世紀半ば頃から常時活動する治安役人が設置された。 (ここまでは『ケルン市警オド』から抜粋引用いたしました) 修道士ファルコと同じ修道院の兄弟(ブラザー)で推理の達人・オドが、俗世で有能な役人として活躍していた頃の物語です。 【主な登場人物】 ・オドアケル・ショルツ(オド):ケルン市警のエース警吏。大学で法律を学んだ有能な人物。 正義感が強く、相手の身分がどんなに高くても臆さない。過去、ある事件をきっかけに薬学に興味を持つようになった。 ・フリート・ベッカー:ケルン市警の新人。オドの補佐。要領が良く、時々すぐれた観察力を示す。 ・ペトルス修道士:第1巻に登場。山奥の修道院の修道士。薬学に精通。オドに大きな影響を与えた。 ・カイ修道士:第2巻で登場。ケルン市内のヨハネ修道院の修道士。薬学に精通。 広い薬草園を管理している。オドと親しくなる。作中には明記されていないが、フランシスコ会かも? 【薬学への道】 第1巻では、ある捜査で閉鎖的な修道院にオドが潜入調査で入り、ペトルス修道士から影響を受けました。 第2巻では、トリカブトの調査がきっかけでカイ修道士と親しくなりました。 オドはどうして修道士になったのでしょうか? その辺り、非常に興味があります。 ネットで調べたところ、既に新章が始まっているようです。続刊が楽しみです!(2018/03/09記) ↑このページの先頭に戻る |
|||
9.『サラディンの日』 青池保子(秋田文庫) 12世紀末 十字軍 テンプル騎士団 ヨハネ騎士団
※歴史冒険マンガ |
※ミステリーではなく、十字軍時代の修道騎士たちの活躍と苦悩を描いた歴史冒険マンガ。 【あらすじ】舞台は、1187年の「ハッティンの戦い」。 テンプル騎士団のユーグとニコラ、ヨハネ騎士団のパオロの三人は、 サラディンの襲撃から人々を救うため、ガザの街に遣わされるが…… 【主な登場人物】 ・ユーグ・ド・モンフォール:主人公、テンプル騎士団。南フランス出身。黒髪の美青年。 勇猛果敢で誠実だが、美しい女性に弱いのが欠点。 ・パオロ・アルベルティ:ヨハネ騎士団。イタリア出身。熱血漢でユーグとは良く喧嘩をしている。 ・ニコラ・ド・クレマンジュ:テンプル騎士団。北フランス出身。 堅物でユーグとパオロに上から目線の助言をすることがある。度々ユーグの聴罪僧を務める。 【魅力】作者は、『修道士ファルコ』と同じ、青池保子さん。 十字軍とサラディン軍、そして騎士修道会の活躍が描かれていて、とても興味深いです。 ブラザー・カドフェルは第1回十字軍(1096-1099)に従軍経験がありますし、 ブラザー・アセルスタン・シリーズには修道騎士が登場します。 テンプル騎士団もヨハネ騎士団も有名ですが、修道騎士が主役の物語は初めて読みました。 同時収録されている続編の『獅子心王リチャード』では、 第3回十字軍(1189年-1192年)が舞台の物語が描かれていて、実在の人物が多く登場します。 もちろん、ユーグとニコラとパオロの三人組も活躍します。 作者の青池保子さんの公式ホームページでは、
と紹介されている作品ですが、内容は非常にシリアスで考えさせられます。 (もちろんギャグシーンもあります) ちなみに、テンプル騎士団の創設には、ブラザー・ファルコが所属するシトー会が関わっています。 【騎士修道会】 キリスト教世界を防衛する騎士道理念と修道性を合わせ持つ、騎士たちの修道会。 団員は清貧・貞潔・服従の誓願を立てた修道士である。 テンプル騎士団・聖ヨハネ騎士団・ドイツ騎士団は三大騎士団と呼ばれる。 【テンプル騎士団】 別名「聖堂騎士団」。 第1回十字軍終了後の1119年、エルサレム巡礼の人々の保護とエルサレム防衛のために設立。 1128年に教皇から認可される。 寄進された所領はヨーロッパ各地に広がり、莫大な財を築いたが、1312年、教皇庁による異端裁判で解体された。 白の修道服に白のマント。どちらにも赤い十字架がついている。 【聖ヨハネ騎士団】 1023年頃、エルサレムの洗礼者ヨハネ修道院の跡に、病院兼巡礼者宿泊所として設立。 1113年に騎士修道会として教皇から認可される。軍事的要素もあったが、病院騎士団として機能していた。 その後、本拠地を移すに従って「ロードス騎士団」「マルタ騎士団」とも呼ばれるように。 「マルタ騎士団」は、現在は医療団体として活動している。 事務局はローマにあり、イタリア当局から治外法権が認められている。 修道服は赤か黒。マントは黒。どちらにも白い十字架がついている。(2015/05/02記) ↑このページの先頭に戻る |
|||
10.『大聖堂』 ケン・フォレット著 矢野浩三郎・訳 (ソフトバンク文庫) 12世紀 イングランド ベネディクト会
※ミステリではありません。 |
※ミステリではないが、カドフェルと同時代の歴史小説なのでご紹介。 【内容】12世紀のイングランド、スティーブン王と女帝モードが王位を争う内乱の時代。 架空の町キングズブリッジを舞台に、大聖堂建設に力を尽くすベネディクト会修道院長フィリップと建築職人のトム、 没落した伯爵家の姫君アリエナの波乱万丈のストーリー。 【コメント】中世の人々の様子(戦争や宗教、貴族や職人の暮らし)が緻密に描かれた興味深い内容だが、 目を覆いたくなるような残酷なシーンも多い。 強烈な弱肉強食の世界なので、読んでいると気分が悪くなることもしばしば。リアルに落ち込んでしまう… 『どんな暗い話もドンと来い!』な方はどうぞ。面白いことは間違いなし。 『大聖堂 果てしなき世界』は『大聖堂』の続編。 『大聖堂』から約150年後、14世紀前半のキングズブリッジを描く。 ペストの流行に立ち向かう修道女の姿が印象的だった。
↑このページの先頭に戻る |
|||
11.『足のない獅子』『黄金の拍車』シリーズ 駒崎優(講談社X文庫) 13世紀後半 イギリス 聖堂参事会
※ティーンズ向け |
※主役は修道士ではなく、青年騎士たち。ティーンズ向けの歴史ミステリ。美形の司祭が活躍します。 中世の王侯貴族の様子・教会の雰囲気・平民の暮らしが生き生きと描かれた爽やかで楽しい小説です。 舞台は13世紀イギリス。 イケメン青年騎士の二人組、リチャードとギルフォードが様々な事件を解決します。 主な登場人物は架空ですが、歴史上の人物も登場します。 『足のない獅子』シリーズ(9作品)は二人の従騎士(見習い騎士)時代、 『黄金の拍車』シリーズ(6作品)は二人が騎士に叙任された後の物語です。 騎士という言葉は良く聞くけど、実際に騎士になるにはどうするの? 紋章官とはどんな役職? そんな素朴な疑問にも答えてくれます。見習い騎士の日々の生活が、意外で面白かったです。 美形の司祭ジョナサンが、やや悪役気味のポジションで活躍(暗躍)します。 更に、色々な小説に出て来るけど、今一つ実体の分からなかった「聖堂参事会」。 こちらの物語には、聖堂参事会や司教座教会の様子も描かれていて、非常に興味深かったです。 【主な登場人物】 ・リチャード・フィッツロイ:主人公の一人。1257年、南ヨーク州ブラッドフィールド生まれ。AB型。 金色の筋の入った茶色の髪、緑灰色の瞳の美青年。観察・分析の能力に優れている。弓が得意。 父親は不明。リチャードの出生の謎が物語の大きな核となっている。 ・ギルフォード・ドニントン:もう一人の主人公。1257年、リチャードの二週間後に生まれた。出生地も同じ。O型。 金髪、長身のハンサム。リチャードの従兄弟(母親同士が姉妹)。 父親はブラッドフィールドおよびグレノウサイドの領主。 リチャードは知力、ギルフォードは体力の印象だが、頭の回転の速い青年である。 この時代、騎士階級でも読み書きのできない者がいたが、リチャードとギルフォードは高い教育を受け、 英語・フランス語ができた。また、ラテン語も少々できるようである。 ・ジョナサン・ハワード:シェフィールドの教区司祭。1250年生まれ。 ハンサムで長身で金持ちなので、女性関係も華やか。 髪の色は、作者さんは茶色と考えていらしたそうだが、イラストでは銀髪となっている。 リチャードを出世のために利用しようとしているため、ギルフォードには嫌われている。 だが、二人に協力することも度々あるので、持ちつ持たれつの関係と言えるだろう。 ・ヒューバート・モートン:シェフィールドの執行長官。 宮廷に仕えていた頃、リチャードの母エリナーに求婚して振られている。厳格で融通の利かない性格。 名前の由来は、「修道士カドフェル」の登場人物、ヒュー・ベリンガーからとのこと。 ・コーンウォール伯エドマンド:歴史上実在の人物。 ヘンリー三世(1207年-1272年 在位:1216年-1272年)の弟コーンウォール伯リチャードの子。 ※第一作の『足のない獅子』のスタートは1276年、エドワード一世(1239年-1397年 在位:1272年-1307年)の時代である。 また、ブラッドフィールド、シェフィールドは実在の地名。他にも実在する町が舞台となっている。 【聖堂参事会】大聖堂に属する聖職者によって構成される組織。 参事会員は、司教座付きの場合は司教の相談役補佐役を務め、日々の聖務を行う。 それぞれが司祭・助祭などの階位を持つ。修道士とは異なり、一般の信徒と交わる(司牧)ことが多い。 また、修道士は私有財産を持たないが、参事会員の多くは大土地所有者である。 多くの参事会は規則として「聖アウグスティヌス会則」を採用していた。 小教区の司祭との違いは、一つの組織として活動していることである。 ※こちらのリストを作成している時に『エアポケットのように13世紀の物語がないのはなぜ?』と思っていました。 貴重な13世紀の物語です。(2015/05/02記) ↑このページの先頭に戻る |
|||
12『チューダー王朝弁護士 シャードレイク』 C.J.サンソム 越前敏弥・訳(集英社文庫) 16世紀前半 イングランド ベネディクト会 カルトゥジオ(カルトジオ)会
|
※修道院で起きた連続殺人事件の謎に、弁護士のシャードレイクが挑みます。 【あらすじ】 1537年初冬のイングランド。 ローマ・カトリックからの離脱を宣言した国王ヘンリー八世は、修道院の解散を進めていた。 当時の修道院はイングランドの土地の四分の一を所有していたので、 修道院の解散はすなわち国庫を潤すことでもあった。 国王の側近トマス・クロムウェル卿が修道院解体の指揮をとり、各地の修道院に監督官を派遣していた。 が、聖ドナトゥス修道院(ベネディクト会)で、監督官が惨殺されるという事件が発生した。 殺された監督官の後任として、 弁護士のマシュー・シャードレイクが秘書のマークと共に聖ドナトゥス修道院へやってくる。 一癖もふた癖もありそうな修道士たち。増える死体… 【魅力】 探偵役となるシャードレイクは、かなりの個性派です。中年の弁護士で、背中に障碍があります。 権力者におもねる一方で、社会的弱者には強圧的な態度をとったりします。 コンプレックスが強く、若い女性に対してはセクハラまがいの言動も。 何だか、ドラマに登場する性格の悪い中間管理職のよう。 でも、事件を通して色々心情の変化があり、その辺りも面白く、読みごたえがあります。 登場する修道士たちも個性派揃いです。表面的には…でも、内面は…だったり。 あまり書くとネタバレが過ぎてしまいますが、なかなか魅力的な修道士もいます。 (この人が若かった頃のスピンオフを読みたい♪) 聖ドナトゥス修道院はベネディクト会の修道院なのですが、一人、カルトゥジオ会の修道士がいます。(理由は作中で…) 表紙のイラストで一人だけ白い修道服を着ていますが、その人です。 【時代背景】 1534年、ヘンリー八世は自らをイングランド国教会の長であるとして、ローマ・カトリックからの離脱を宣言。 1536年、ヘンリー八世の二番目の王妃アン・ブーリンが姦通罪で処刑されました。 1537年には、三番目の王妃ジェーン・シーモアが男子出産後の肥立ちが悪く死去しました。 こちらの小説は、ジェーン王妃が亡くなった直後のお話で、二人の王妃の謎も関わってきます。 (尚、アン・ブーリンの罪は冤罪であったというのが現在の通説のようです) 【イングランドにおける修道院の解体】 1536年に小修道院の解散法が、1539年に大修道院の解散法が成立。 1540年には、全ての修道院が姿を消しました。(建物も破壊されました) ここで疑問に思ったのが、「カドフェル・ツアー」が行われているという修道院の存在。 ネットで聖堂の写真を見たこともあるので、疑問に感じて調べてみました。 シュルーズベリー修道院は1083年の設立。 ヘンリー八世によって破壊され、1800年代に復元されたそうです。 現存する建物は、カドフェルの時代のものではないのですね。 【カルトゥジオ(カルトジオ)会】 11世紀、ケルンのブルーノにより創始された21世紀も現役の修道会。 1084年、ブルーノはフランスのアルプス山中に「グランド・シャトルーズ修道院」を創建した。 教皇による認可はブルーノの死後の1164年。 16世紀の宗教改革の時代には、抗争に巻き込まれ多くの殉教者を出した。 隠者のような修道生活で、世界一厳格な修道院と呼ばれている。 ※シャードレイク・シリーズは、三冊が翻訳されています。 少し調べたところ、二巻以降は宗教色はあまりなさそうです。(その為、今のところ読む予定はありません) ちなみに、マルティン・ルターらがカトリック教会に対する宗教改革運動を起こしたのが1517年以降。 イエズス会が創設されたのが1534年です。 この時代、政治的にも宗教的にも、混迷の時代だったのですね。(2015/09/22記) ↑このページの先頭に戻る |
|||
13.『カルチェ・ラタン』 佐藤賢一(集英社) 16世紀前半 パリ フランシスコ会・イエズス会
|
※初めに。実は、この小説をリストに載せるか否か、非常に悩みました。 有名修道会修道士が大活躍する歴史ミステリ。でも、有り体に言えば、えっちーなんです……。 いわゆるその手の描写がたくさんあります。苦手な方にはまったくお勧めできません。 が、内容は面白いです。色々ジレンマはありますが、以下、ご紹介です。 1536年、パリ。 パリ夜警隊長のドニ・クルパンとパリ大学神学部の秀才でフランシスコ会修道士マギステル・ミシェルが、 大学とその周辺で起きる怪事件を解決する。 神学問答、プロテスタントの台頭、カトリック教会内の内紛、初期のイエズス会の様子などが描かれ、興味深い。 【主な登場人物】 ・ドニ・クルパン:パリ夜警隊長。大手船会社の次男坊。小柄な体格がコンプレックスで女性には奥手。 ミシェルの弟子で、何かとミシェルを頼る癖がある。泣き虫。 本書は、ドニ・クルパンの回想録という形をとっている。 ・マギステル・ミシェル:フランシスコ会修道士。 パリ大学神学部の秀才。美丈夫で女性にモテモテ。本人も女好き。ドニの元家庭教師。 わずかな手掛かりから真実を導き出す推理の天才。また、多くの分野の学問に精通する。 出自や経歴など謎の多い人物。(作品の中で徐々に明かされていきます。その辺りもこの作品の面白いところ) 尚、マギステルとは、人文系の上級学位のこと。 ・イニゴ・デ・ロヨラ(イグナチオ・デ・ロヨラ):イエズス会創設者。(1491年-1556年) 本書の頃は、パリ大学で神学を学びつつ、後に行動を共にする同志を得ていた。 豪快で魅力的な人物。既にこの頃から聖人のオーラがあった。 ・フランシスコ・ザビエル:イエズス会創設メンバーの一人。(1506年頃-1552年) 19歳でパリ大学に留学。ロヨラから影響を受け、聖職者を志すことになる。 カトリック教会の聖人。1549年に日本にキリスト教を伝えた。好青年。 ・ジャン・カルヴァン:キリスト教宗教改革初期の指導者。(1509年-1564年) ※他にも、実在の有名人が登場します。 【イエズス会】 1534年、イグナチオ・デ・ロヨラとパリ大学の学友6人の同志が、 パリ郊外のモンマルトルの丘のサン・ドニ聖堂に集まり、生涯を神に捧げる誓いを立てた。 この日がイエズス会の創立日とされる。教皇による認可は1540年。 イエズス会の主な活動分野は三つ。一つは高等教育で、多くの学校を設立した。 二つ目は非キリスト者を信仰に導く宣教。三つ目は、プロテスタントの拡大に対抗する防波堤となることであった。 また、イエズス会は「教皇の精鋭部隊」とも呼ばれた。 現代では、カトリック教会の男子修道院としては最大規模であり、教育活動・宣教事業・社会正義事業を行っている。 ※イエズス会修道士やフランシスコ会修道士が大活躍する歴史ミステリ! 面白いのですが、初めに記したようにえっちー描写が多いです。もう少しマイルドならなあ〜と、少し残念。(2015/05/21記) ↑このページの先頭に戻る |
|||
14.『聴罪師アドリアン』シリーズ 吉田縁(集英社コバルト文庫) 既刊5巻(事実上絶版) ※ファンタジーのため 架空の時代・国・宗教
※ティーンズ向け |
※ティーンズ向けの中世ホラーファンタジー。 架空の時代・国・宗教だが、中世フランスを舞台にしたカトリックの司祭の物語として読んでも、さほど違和感はない。 小さな貧しいサラ村の聖ボナ教会に新しく赴任してきた美貌の青年司祭・アドリアン。 アドリアンには、死者の霊の声が聞こえるという聴罪の能力があった。 (※本来の「聴罪」の意味とは異なる使い方なので注意) 物語は、アドリアンと死霊の戦いと、村娘ビアンカとの淡いロマンスが軸になっている。 【主な登場人物】 ・アドリアン・ブランシュ:金の髪と目を持つ美貌の青年司祭。 赤ん坊の頃、ヴェネデット大修道院の門前に捨てられ、修道院長に拾われ、修道院で育った。 名付け親であり保護者でもあった枢機卿が亡くなり、サラ村の聖ボナ教会に赴任してきた。 大変な学識があり、武器を用いない護身術の達人で、剣も使える。 また、この世に心を残す死者の霊の声を聴き、帰天させたり、断罪する力を持つ「聴罪師」でもある。 アドリアンの母に恨みを持つ12の悪霊(魔物)がアドリアンの命を狙っている。 それらの悪霊は、しばしばアドリアンの周囲の人々をも巻き込み、アドリアンに襲い掛かる。 身長:179cm 血液型:A型 年齢:推定20歳。 ・ビアンカ:サラ村の鉄細工師モライシュの娘。黒い髪と瞳。 お産で亡くなった母親の柩の中で生まれたため、村人から「悪魔憑きの娘」と忌み嫌われている。 黒い髪と瞳の色もこの地方では見られない色なので、それも恐れられる原因となっている。 機織り・刺繍が得意。アドリアンに淡い想いを寄せている。 ビアンカもアドリアンと同じく、死者の声を聴く能力を持っている。 身長:157cm 血液型:O型 年齢:14歳 天秤座。 ・ピエモス:ブルガダの領主、ブラウ伯爵家の跡取り息子。領内にサラ村がある。 奔放な性格で乱暴者。村の若い娘にはすぐに手を付けてしまうことで有名。 ある事件で初めて見掛けたビアンカに一方的に想いを寄せ、手に入れようと画策する。 身長:182cm 血液型:A型 年齢:24歳 乙女座。趣味は狩りと女遊び。 ・ボルヘ:聖ボナ教会の助祭。 俗世に長くいた為、村人の噂話に通じていたりと俗っぽい面が抜けず、しばしばアドリアンにたしなめられている。 だが、ボルヘの処世術が役に立つことも度々ある。 基本的な生活力のないアドリアンの世話役。 身長:160cm 血液型:AB型 年齢:60歳位 魚座。畑の世話を良くしている。 ファンタジー小説のモデルを探そうとするのは野暮なのかもしれないと思いつつ、 12〜13世紀のフランスが舞台であろうと推測しています。教会関係の描写は、カトリックにほぼ忠実です。 歴史ミステリは実在の人物が登場するのが面白い半面、王様の系図が頭の中でゴチャゴチャするのが、時には辛いもの。 本書は楽な気持ちで中世の世界を楽しむことができる小説と言えます。 助祭が活躍する作品はほぼないので(少なくともこのリスト上は)、その辺りも興味深く読めます。 既刊5作品。事実上の絶版状態。 アドリアンの出生の謎や切ないロマンスの行方が気になりますが、残念ながら未完です。(2015/11/29記) ↑このページの先頭に戻る |
|||
15.『ユーゴ修道士と本を愛しすぎたクマ』 ケイティ・ビービ文 S.D.シンドラー絵 千葉茂樹・訳(光村教育図書) 12世紀 フランス ベネディクト会・カルトゥジオ会 |
※11世紀の実話をもとにした絵本です。 【あらすじ】 ユーゴ修道士は、聖アウグスティヌスの言葉が書かれた本を借りに、グランド・シャルトルーズ修道院へ向かった。 四旬節の償いに、写本するためだ。 クマに追われながらも、アヴェ・マリアの祈りを唱え、ユーゴ修道士は無事に本を借りて修道院に帰りついた。 だが、「どうやって、たった一人で写本を?」とユーゴ修道士が途方に暮れていると、仲間の修道士たちが手伝ってくれた。 羊の皮で羊皮紙を作ってくれる者、羊皮紙に罫線をひいてくれる者、鵞鳥の羽やインクをくれる者… 写本は無事に出来上がり、ユーゴは再びグランド・シャトルーズ修道院へ、本を返すために向かう。 が、クマが後を追い掛けてくるのだった… 【背景】 ベネディクト会のユーゴ修道士は実在し、11世紀の終わり頃に作られたヒエロニムスの『イザヤ書注解』の写本に、 自画像と「絵描きのユーゴ」というメモを書き残しています。 絵本に登場する二つの修道院は、12世紀のフランスにあった有名な修道院で、 ベネディクト会のクリュニー修道院と、カルトゥジオ会のグランド・シャトルーズ修道院です。 どちらの修道院にも大きな図書館があり、議論や本の貸し借りが活発に行われていたとのこと。 クリュニー修道院の修道院長ペトルスがグランド・シャトルーズ修道院の修道院長グイゴに、 「聖アウグスティヌスの書簡集」の貸し出しを依頼した手紙が残っているそうです。 理由は、クマに食べられてしまったから! クマが本を食べることってあるのですね! 羊皮紙で出来ていますから、狙われたのでしょうか? オオカミにも狙われそうですね。 修道院や写本室の雰囲気や写本の製作過程が詳しく描かれていて、とても興味深いです。 また美しいイラストで、中世の写本を見ているような気持ちになれる絵本です。 ・聖アウグスティヌス(354年-430年):古代キリスト教の司教で、神学者・哲学者。 中世にはキリスト教会の精神的支柱として崇敬された。(2018/09/28記) ↑このページの先頭に戻る |